秘密保持契約書の達人

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廃棄物処理委託契約書の秘密保持義務:目次

  1. 廃棄物処理委託約とは
  2. 廃棄物処理委託契約と契約書
  3. 産業廃棄物処理委託契約と秘密保持義務
  4. 秘密情報を確実に処分してもらう契約書に変更する

廃棄物処理委託約とは

いわゆる「ごみ処理」の契約

廃棄物処理委託契約とは、一般的には、産廃処理法(廃棄物の処理及び清掃に関する法律)に規定する、一般廃棄物処理業者や産業廃棄物処理業者がおこなう廃棄物の収集運搬・廃棄物処理の契約をいいます。

 

この点については、産廃処理法の解釈によっては、廃棄物処理委託契約は、必ずしもすべての廃棄物処理委託契約が一般廃棄物処理業者や産業廃棄物処理業者への委託によるものとは限りません。

 

このため、廃棄物の種類や処理の内容によっては、産廃処理法の規制の対象外であることもあります。

 

例えば、引越し業者による引越しの際に発生した処分品の引き取りなどは、産廃処理法の規制対象外です。また、廃棄物を買い取る場合も産廃処理法の対象外です(これは古物営業法の規制対象となります)。

 

もっとも、事業者が廃棄物の処理をおこなう場合は、コンプライアンスや確実な廃棄物処理のために、廃棄物処理法上の許可を取得している一般廃棄物処理業者や産業廃棄物処理業者を利用するべきです。

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廃棄物処理委託契約と契約書

廃棄物処理委託契約書の作成は法的義務

廃棄物処理委託契約のうち、産業廃棄物(特別管理産業廃棄物を除く)の廃棄物処理委託契約については、産廃処理法第12条第6項・同施行規則第6条の2第5項により、契約書の作成が義務づけられています。

 

この他の廃棄物処理委託契約(特に一般廃棄物処理委託契約)については、廃棄物処理法においては、必ずしも契約書の作成までは義務づけられているわけではありません(文書による通知などが必要な場合があります)。

 

つまり、一般的な事業者が産廃業者に産廃の処理を委託する場合は、廃棄物処理委託契約書の作成が必須であるといえます。

 

この点について、一般的には、産廃業者が契約書(主に業界団体等の「産業廃棄物処理委託標準契約書」が使われます)を用意しています。産廃業者を利用する事業者としては、その契約書を審査のうえ、契約を結ぶことになります。

 

なお、廃棄物処理委託契約書を作成せずに産廃業者に産廃の処理を委託した場合は、3年以下の懲役もしくは300万円以下の罰金が科され、またはその併科となります(廃棄物処理法第26条第1号)。

産業廃棄物処理委託契約と秘密保持義務

秘密情報の流出・漏洩を防止するためには、産廃の処分方法が重要となります。

 

廃棄物処理委託契約は、秘密情報の記録媒体や秘密情報が具現化した物品の処理を目的とした契約です。このような記録媒体や物品を処分する目的は、秘密情報の完全な消去です。

 

このため、最終的な処分としては、溶解処理や焼却処理をすることになります。この処理方法は、再生不能であるという点において非常に重要です。

 

従って、委託者としては、廃棄物処理委託契約書の内容としても、記録媒体・物品の処分方法を規定する条項において、「再生不能」の方法である旨を明記するべきです。

 

必ず厳格な秘密保持義務を規定する

また、これらの記録媒体・物品が処分の前に外部に流出した場合は、秘密情報が漏洩するリスクがあります。その意味では、委託者としては、廃棄物処理業者に対して、厳格な秘密保持義務を課す必要があります。

秘密情報を確実に処分してもらう契約書に変更する

しかしながら、一般的な産業廃棄物処理委託契約書には、あまり秘密保持義務が規定されていません。

 

この点について、産業廃棄物処理業者の業界団体である公益社団法人全国産業廃棄物連合会作成の標準様式(「産業廃棄物収集・運搬委託基本契約書」・「産業廃棄物収集・運搬及び処分委託基本契約書」・「産業廃棄物処理委託基本契約約款」)によると、次のような規定となっています。

第11条(機密保持)

甲及び乙は、この契約に関連して、業務上知り得た相手方の機密を第三者に漏らしてはならない。当該機密を公表する必要が生じた場合には、相手方の書面による許諾を得なければならない。

秘密情報の取り扱いについては、この1条しか規定されていません。この規定では、秘密情報の記録媒体や秘密情報の具現化した物品の処理を目的とした契約としては不十分です。

 

秘密情報は「業務上知り得ない」

特に、秘密情報の定義は、「業務上知り得た相手方の機密」となっています。

 

通常、処理を委託する秘密情報は、「業務上知り得」りえない状態で廃棄物処理業者に引渡しますので、処理を委託した秘密情報は「業務上知り得た」情報とは解釈されない可能性もあります。

 

つまり、処理を委託する秘密情報は、秘密保持義務の対象外となると解釈される可能性があります。

 

また、この標準様式以外の産業廃棄物処理委託契約書では、地方公共団体等が用意している契約書ですら、秘密保持義務に関する規定が一切存在しないものもあります。

 

このような契約書が産業廃棄物処理業者から提示された場合、委託者としては、秘密保持義務の内容をもっと厳格に修正するか、または別途の秘密保持契約書を取り交わすべきです。

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