秘密保持契約書の達人

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秘密保持契約書とは:目次

  1. 秘密保持契約=機密保持契約=守秘義務契約=NDA
  2. 民法にはない「なんでもあり」の契約
  3. 秘密保持契約=秘密保持義務+αの契約
  4. 情報漏洩のリスクの対策として秘密保持契約書が重要

秘密保持契約=機密保持契約=守秘義務契約=NDA

秘密保持契約とは、一般に、契約当事者に秘密保持義務(機密保持義務、守秘義務ともいいます。)を課す契約でのことをいいます。

 

別の表現では、機密保持契約、守秘義務契約ともいいます。

 

また、英語表記では、「Non-Disclosure Agreement」とされています。これを省略して「NDA」と呼ばれることもあります。

 

このサイトでは、「秘密保持契約」という表現で統一しています。

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民法にはない「なんでもあり」の契約

秘密保持契約は、いあゆる「契約自由の原則」により、自由に内容を決めることができます。

 

秘密保持契約は、現行の民法では規定されていません(このような民法上規定されていない契約のことを「非典型契約」といいます)。

 

つまり、秘密保持契約は、正式に法律で定義づけられたものではありません。このような事情から、秘密保持契約の内容は、統一的に決まっているわけではありません。

 

この点から、秘密保持契約の内容は、当事者が自由に決めることができます。当事者がお互いに納得さえすれば、いわば、「なんでもあり」の契約であるといえます。

 

逆にいえば、当事者がすべての契約内容を決めなければならない契約でもあります。

 

それだけに、秘密保持契約を理解し、実際に活用するためには、非常に高度な専門知識が必要となります。

 

なお、いろいろな法律によって、事業者には秘密保持義務が課される場合があります。特に、国家資格の保有者には、高度な秘密保持義務が課される場合があります。
参考:秘密保持義務を負う職業

 

また、法律に規定がない場合でも、秘密保持義務が課される場合があります(例:労働契約・雇用契約における労働者など)。

秘密保持契約=秘密保持義務+αの契約

秘密保持契約は、秘密保持義務だけの契約ではなく、他にいろいろな契約条項が付随してくる契約です。

 

秘密保持契約は、その名のとおり、秘密保持義務が中心となる契約です。このため、しばしば、契約条項として、秘密保持義務と少数の一般的な条項しか規定されていないことがあります。

 

確かに、秘密保持義務は、秘密保持契約において、最も重要な規定のひとつです。ただ、その他にも重要な規定は数多く存在します。

 

秘密保持契約は、主に、次の3つの要素から構成されます。

  1. 秘密保持義務
  2. 目的の範囲内での情報の使用許諾(目的外使用の禁止
  3. 情報の開示

最低限、これらが規定されていないと、秘密保持契約としては機能しない可能性があります。

 

実は、これらの要素は、次のとおり、それぞれ別々の契約として独立して考えることができるものです。

  1. 秘密保持義務=(狭い意味での)秘密保持契約
  2. 目的の範囲内での情報の使用許諾(目的外使用の禁止=(秘密情報の)ライセンス契約
  3. 情報の開示=MTA(Material Transfer Agreement)など

つまり、それぞれの内容について徹底的に検討した場合、秘密保持契約は、3種類の契約が混在して統合された契約といっても過言ではありません。

 

当然ながら、秘密保持契約は、それだけ高度な実務能力が問われる契約であるといえます。

 

このサイトでは、秘密保持義務を含め、これらの重要な規定について取り扱っています。

情報漏洩のリスクの対策として秘密保持契約書が重要

秘密保持契約書は、近年の情報技術(IT)の発達、知識経営の概念の浸透、日本政府の知財立国の推進、個人情報の漏洩事件の多発などの要因によって、企業間取引では重視されるようになっています。

 

特に、技術情報の開示が伴うような契約(例:共同研究開発やライセンス契約など)の場合、発明の要件としての新規性(考案や意匠も同様)や、営業秘密の要件としての非公知性・秘密管理性を充たすためにも、秘密保持契約書や秘密保持条項は、重要となっています。

 

また、ソーシャルメディアの発達などにより、従来では考えられなかったような方法により、企業の内部情報が漏洩することも珍しくなくなってきています。典型的な例としては、スマートフォンなどの使用による従業員からの情報漏洩です。

 

特に、顧客情報の不正取得や、SNSへの利用客のプライベートの投稿など、スマートフォンに関連した情報漏洩は最近増加傾向にあります。

 

このような従業員からの情報漏洩への法的な対策としても、秘密保持契約書(誓約書)の重要性は高まりつつあります。

 

秘密保持契約書は、(他の契約もそうですが)単に取り交わせばいい、というものではありません。情報の漏洩は、他の契約とはことなり、最終的にお金(損害賠償)によって解決できるようなものではありません。

 

このため、秘密保持契約の内容を理解し、また、相手に理解させ、いかに情報漏洩が起こらないにようさせるのか、という「抑止力」としての使い方が求められます。

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