秘密保持契約書の達人

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税理士の秘密保持義務・守秘義務:目次

  1. 税理士の職務と秘密情報
  2. 税理士の秘密保持義務・守秘義務
  3. 情報漏洩のリスクは事務所次第
  4. 税理士本人以外からの情報漏洩に注意
  5. 税務署が開示を求めた情報は「秘密保持義務」の例外とする

税理士の職務と秘密情報

会計・財務・税務を取扱う資格

税理士は、税務代理、税務書類の作成、税務相談をおこなう職業です(税理士法第2条第1項各号)。これに加えて、「税理士業務に付随して、財務書類の作成、会計帳簿の記帳の代行その他財務に関する事務」をおこなうこともできます。

 

このように、税理士は、監査業務以外の財務・会計・税務に関する業務を全般的におこなうことができます。これらの業務の専門家としては、公認会計士や弁護士に次ぐ広い範囲の業務を取扱うことができます。

 

経営全般の情報の開示を受けることもある

また、税理士は、他の士業と比べても、顧客である企業と顧問契約を結ぶ傾向が強いといえます(通常はスポットでの依頼を受けることは少ないといえます)。

 

このため、上記の業務以外でも、会社経営全般について助言を求められることがあります。この点からも、顧問先である企業としては、多くの情報を開示することがあります。

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税理士の秘密保持義務・守秘義務

取扱う情報は非常に機密性が高い

財務・会計・税務に関する情報は、客観的な数字で正確に企業の実態を表したものです。当然ながら、これらの情報を正確に把握するためには、企業の業務内容をも正確に把握しておく必要があります。

 

このため、税理士が取扱う情報は、監査に関する情報が含まれないとはいえ、極めて機密性が高い情報であるといえます。

 

税理士法にもとづく秘密保持義務

このようなことから、税理士には、税理士法第38条により、秘密保持義務が課されています。

税理士法第38条(秘密を守る義務)

税理士は、正当な理由がなくて、税理士業務に関して知り得た秘密を他に洩らし、又は窃用してはならない。税理士でなくなつた後においても、また同様とする。

この規定に違反した場合は、「二年以下の懲役又は百万円以下の罰金」が課されます(税理士法第59条)。

 

依頼者との間にも善管注意義務にもとづく秘密保持義務が発生する

なお、税理士法は、依頼者との関係を直接的に拘束する民事上の効果はありません。

 

ただ、一般的には、この規定や税理士に課せられる善管注意義務を根拠に、税理士は、依頼者に対して、当然に秘密保持義務を負っているとされます。

情報漏洩のリスクは事務所次第

税理士の主要な職務は、税務署を相手方とした税務代理です。このため、税理士は、主に依頼者と税務署を相手に職務をおこないます。

 

この点について、税務署の職員には、国家公務員法第100条や、各種税法により、秘密保持義務が課されています。このため、税理士やその職務の相手方である税務署から情報が漏洩する可能性は低いといえます(ただし、まったく可能性がないわけではありません)。

 

公認会計士の業界団体との違い

また、税理士の業界団体である日本税理士会連合会では、特に統一的な情報漏洩対策の指針等を策定してはいないようです(2015年7月1日現在)。

 

これに対し、公認会計士の業界団体である日本公認会計士協会では、『公認会計士業務における情報セキュリティの指針』や『業務上取り扱う電子データの漏洩を防ぐセキュリティの指針』を策定しています。

 

参考:公認会計士の秘密保持義務・守秘義務

 

以上のように、税理士やその業界団体による情報漏洩への対策が必ずしも明らかでない部分がありますので、個々の税理士の情報管理体制については、個別具体的に検討する必要があります。

税理士本人以外からの情報漏洩に注意

税理士は、依頼者と税務署だけを相手に職務をおこなっているわけではありません。

 

例えば、財務書類の作成や会計帳簿の記帳のためのシステム開発やその保守点検を外注することがあります。このような場合、外注先であるシステム開発業者から情報が漏洩する可能性もあります。

 

従業員からの情報漏洩に注意

また、外部の関係者ではなく、内部の関係者から情報が漏洩する可能性があります。特に、税理士事務所の従業員や税理士事務所の子会社である計算事務の会社などから情報が漏洩する可能性もあります(大阪地裁判決平成11年09月14日)。

 

このため、情報漏洩のリスクが低いとはいえ、依頼者として税理士や税理士法人を利用する場合、念のため、顧問契約書には、秘密保持義務を明記するようにしてください。

税務署が開示を求めた情報は「秘密保持義務」の例外とする

なお、官公署から開示を求められた情報を秘密情報の例外とする秘密保持契約書があります。このような規定では、税務署が税務調査で開示を求めた情報が秘密情報でなくなってしまいます。

 

これでは、例えば情報を開示した相手方が税務署によって開示を求められた場合、相手方によって、その情報が公開されたり、目的外の使用をされたりしても、理屈のうえでは、秘密保持契約違反を問うことができなくなります。

 

このため、税務調査などで税務署が開示を求めた情報は、「秘密情報」の例外とせずに、「秘密保持義務」の例外とします。そのうえで、税務署に対してのみ開示できるように規定します。

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