秘密保持契約書の達人

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行政書士の秘密保持義務・守秘義務:目次

  1. 行政書士の職務と秘密情報
  2. 行政書士の秘密保持義務・守秘義務
  3. 許認可の種類によっては要注意
  4. 契約書を取り交わすこと

行政書士の職務と秘密情報

主に行政低続きに使用する企業の情報を取扱う資格

行政書士は、官公署に提出する書類その他権利義務または事実証明に関する書類の作成、これらの書類を官公署に提出する手続等についての当事者の代理、契約その他に関する書類を当事者の代理人としての作成などをおこなう職業です(行政書士法第1条の2、第1条の3)。

 

また、これらの書類の作成についての相談に応じることもできます(行政書士法第1条の3第3号)。

 

行政書士が行政書士法で作成が認められている書類は実に多く、一説には、数千種類や1万種類もあるといわれています。これらの書類には、一般の方々でも簡単にできるものもあれば、高度な専門知識が必要なものまであります。

 

一般的な行政書士は、建設業、運送業、宅建業などの許認可の申請や、会社設立における定款認証など、官公署に対する手続きについて依頼者を代理することを職務としています(弊事務所のような契約書の作成を専門とする行政書士事務所は例外といえます)。

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行政書士の秘密保持義務・守秘義務

場合によっては機密性が高い企業情報や役員・従業員の個人情報を扱う

上記のような手続きでは、所管する官公署や都道府県に対して、企業の内部情報や決算書類などの財務・会計情報を提出することになります。

 

また、役員や重要な使用人(従業員)などの履歴書などを添付することもあります。つまり、行政書士は、職務として、企業にとって重要な内部情報や役員などの個人情報を取扱うこともあります。

 

行政書士法にもとづく秘密保持義務

このようなことから、行政書士には、行政書士法第12条により、秘密保持義務が課されています。

行政書士法第12条(秘密を守る義務)

行政書士は、正当な理由がなく、その業務上取り扱つた事項について知り得た秘密を漏らしてはならない。行政書士でなくなった後も、また同様とする。

この規定に違反した場合は、「一年以下の懲役又は百万円以下の罰金」が課されます(行政書士法第22条)。

 

依頼者との間にも善管注意義務にもとづく秘密保持義務が発生する

なお、行政書士法は、依頼者との関係を直接的に拘束する民事的効果はありません。

 

ただ、一般的には、この規定や行政書士に課せられる善管注意義務を根拠に、行政書士は、依頼者に対して、当然に秘密保持義務を負っているとされます。

許認可の種類によっては要注意

すでに述べたとおり、行政書士の主要な職務は、官公署を相手方とした手続きの代理です。このため、行政書士は、主に依頼者と官公署を相手に職務をおこないます。

 

この点について、官公署の職員には、国家公務員法第100条や地方公務員法第34条により、秘密保持義務が課されています。このため、行政書士やその職務の相手方である官公署から情報が漏洩する可能性は低いといえます(ただし、まったく可能性がないわけではありません)。

 

ただ、いかに可能性が低いとはいえ、許認可の種類によっては、行政書士は、かなり高度な機密情報を取扱うことがあります。

 

特に、企業の許認可の申請のうち、複雑なものの場合は、決算書、事業計画、経営審査事項など、企業の根幹に関わる情報を取扱います。

 

当然ながら、これらの情報が外部に漏洩してしまうと、事業に支障が出る可能性があります。特に、銀行、取引先、競合他社に内部事情を知られてしまうと、取引が停止となったり、取引先を奪われたりすることも考えられます。

契約書を取り交わすこと

このため、情報漏洩のリスクが低いとはいえ、依頼者として行政書士を利用する場合、念のため、(準)委任契約書には秘密保持義務を明記するようするべきです。

 

また、許認可の手続きが完了した場合、行政書士に対して開示した手続きに必要だった情報は、不要な情報となります(ただし、継続的に更新が発生する手続きは別です)。

 

このため、依頼者としては、返還・廃棄・消去を求めるべきですし、行政書士としては、原則としてこれを拒否する理由はありません。

 

このため、(準)委任契約書には、手続きが終了した際の秘密情報の取扱い(返還・廃棄・消去など)についても規定するべきです。

 

なお、業界の悪い慣例として、一部の行政書士事務所では契約書の取り交わしすらおこなわないこともあります。このような行政書士への依頼の際には、特に注意してください。

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