秘密情報の定義を決定する際に、開示する情報を、詳細かつ具体的な方法に決定する方法があります。
詳細かつ具体的な方法とは、
「情報の内容そのものを記載する方法」で、
「特に技術的情報の場合、特許のクレームに類似した形で規定する方法」のことです。
( 経産省作成
『営業秘密管理指針』39ページ)
つまり、
記録媒体や
概念のほかにも、固有名詞や数字等を使用して、開示された情報を限定していく、ということです。
これは、本来の、定義条項のあるべき定義づけの方法です。
そういう意味では、この秘密情報の定義の仕方が、他の定義の仕方のように、あまりにも秘密情報が広範囲だという理由で、民法90条(公序良俗)によって否定されることは少ないと思われます。
ただし、この定義の仕方は、実務的には、非常に困難が伴う仕方ですから、
当然、豊富な実務経験が要求される定義の仕方です。
まず、定義の表現自体が、実は非常に難しい作業になります。
実際にやってみるとわかりますが、定義条項の表現は、契約書のドラフティング(起案)の際に、最も労力を使う作業のひとつです。
定義条項は、契約内容それぞれによって変える必要のある条項ですから、たいていの表現は、最初から考えなくてはなりません。
(そういう意味では、雛形ではまったく対応できない部分です。)
秘密保持契約においては、秘密情報の定義の表現は、その生命線となる条項ですから、一切の妥協は許されません。
また、この定義の仕方だと、秘密情報自体を、極めて限定することになります。
そうなると、
秘密情報の定義に漏れが生じてくる可能性があります。
そういう意味では、
あまりに秘密情報を限定しすぎることは、かえって秘密情報の漏洩を引き起こすことになりかねません。
実務的には、企業間の契約でこのように秘密情報を定義することは、あまりおこなわれません。
前記のように、実務上の困難も原因ですが、企業間の取引では、秘密保持契約と、他のなんらかの契約とを連動させることになりますので、一般的には、それほど具体的に秘密情報を定義づけなくても、契約の有効性が損なわれることはないものと思われるからです。
また、企業間契約では、最初に契約条件を決めてしまうと後々の変更が難しいため、最初の契約条件の際に完全に詳細に秘密情報を定義づけてしまわなければなりません。
そうなると、実務的には、(契約交渉の労力も含めて)非常に労力が伴うことになります。
ではどういう場合にこの定義の仕方が使われるのかというと、事業者と従業員との秘密保持契約の場合です。
事業者と従業員との秘密保持契約では、あまりに広範囲の開示情報を秘密情報とする定義の仕方は、民法90条(公序良俗)によって否定される可能性があります。
ですから、秘密情報の定義を詳細かつ具体的に定義づけることが求められるため、この定義の仕方が好ましいと言えます。
また、事業者と従業員との秘密保持契約の場合は、業務の内容も具体的にわかっていることが多いため、定義づけの作業自体も、さほど難しくはありません。
ですから、従業員と秘密保持契約を取り交わす際には、積極的にこの定義の仕方を活用しましょう。