秘密保持契約書の達人

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公証制度の活用:目次

  1. 公証制度とは
  2. 確定日付を積極的に活用する
  3. 書面の営業秘密に確定日付をつける方法
  4. 書面に記録することができない場合
  5. 「事実実験公正証書」の活用

公証制度とは

文字どおり「公に証明する」制度

公証制度とは、「国民の私的な法律紛争を未然に防ぎ、私的法律関係の明確化、安定化を図ることを目的として、証書の作成等の方法により一定の事項を公証人に証明させる制度」です(法務省:公証制度について)。

 

情報を秘匿して保護する制度として、不正競争防止法の営業秘密の保護制度には、多くのメリットがあります。

 

しかしながら、「秘匿して保護する」という性質上、営業秘密の存在そのものを証明できる客観的な証拠を確保しにくい、という大きなデメリットがあります。

 

このようなデメリットを解消するために、公証制度が活用できます。

 

公証制度は、わかりやすく表現すれば、事実の存在を公証人に証明してもらう制度です。公証制度により証明された事実は、特許の出願公開のように、公開されることはありません。それどころか、公証人には守秘義務があります(公証人法第4条)。

 

このため、情報を秘匿しながら保護するための客観的な証拠の確保の方法としては、公証制度は、非常に適切な制度であるといえます。

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確定日付を積極的に活用する

秘密情報を営業秘密として保護する場合は、公証制度のなかでも、確定日付が活用しやすい制度です。

 

確定日付=「過去に存在したこと」を証明する制度

確定日付とは、公証人が私文書=私署証書(私人の署名または記名押印のある文書)に押印する日付が確定された印章(確定日付印)のことで、その日付現在に、押印された文書が存在することを証するものです。

 

ただし、文書の正確性や真正性、つまり記載内容について証明するものではりません。

 

確定日付が押印された書面は、その日付現在に存在したという、極めて強力な証拠となります。逆に、確定日付がなければ、第三者に対して、その書面の作成の日について、完全な証拠力を有しません(民法施行法第4条)。

 

「後付け」で証拠を捏造したことにならない

営業秘密を保護する場合、その存在の証拠も重要ですが、同様に、営業秘密がいつの時点で存在したのか、という時間軸の証拠も重要です。

 

このように、過去に客観的な証拠を確保しておくことで、裁判などでは、いわば「後付け」で証拠を捏造した、というように判断されなくなる可能性が高くなります。

 

確定日付の費用は1件700円と低額であるため、利用しやすい制度であるといえます。

書面の営業秘密に確定日付をつける方法

営業秘密・著作権・特許の先使用権の3つの保護のために活用できる

このように、秘密情報を営業秘密として保護する場合、確定日付は非常に有効な制度です。

 

これは、秘密情報を営業秘密として保護するためだけでなく、秘匿した著作権として保護するためにも重要です。また、いわゆる特許の「先使用権」の証拠を残すためにも活用できます。

 

書面への確定日付の具体的方法

具体的な方法としては、営業秘密を記録した書面をプリントアウトして袋とじにして保管します。

 

糊付けの箇所は、契約書用の製本テープでも差し支えありません。(下図参照。◎は確定日付の押印)。

書面への確定日付

出典:特許庁『先使用権制度の円滑な活用に向けて −戦略的なノウハウ管理のために−』平成18年

 

こうすることで、とじた書面全体に確定日付が押印されたことになります。

 

実際に書面を作成する際には、保存用・閲覧用を各1部づつ作成し、保存用は、改ざんしていない証拠として、密封して保存します(上図(b)参照)。

 

なお、場合によっては、保存用と閲覧用が同一のものであることを証明するために、割り印を押印することも検討してください。

書面に記録することができない場合

営業秘密を書面に記録することができない場合や、書面の量が膨大な場合は、別の方法で対応します。

 

具体的な方法としては、動画、文書ファイル、プログラムなどの営業秘密を記録したCD-Rなどを封筒に密封します(上図(b)参照)。

 

このような方法は、小型の物品(部品やサンプルなど)を記録する方法としても活用できます。

 

ダンボールに確定日付を押す方法

なお、このような封筒に収まらないサイズの物品については、ダンボールに保存する方法もあります(下図参照。◎は確定日付の押印)。

段ボールへの確定日付

出典:同上

「事実実験公正証書」の活用

さらに、これらの方法でも証拠として残しておくことが難しい場合(物の製造方法など)については、「事実実験公正証書」という制度による対応ができます。

 

事実実験公証証書とは、「権利義務や法律上の地位に関係する重要な事実について公証人が実験、すなわち五官の作用で認識した結果を記述する公正証書」のことをいいます(法務省:公証制度について)。

 

この事実実験公証証書を活用することにより、書面や映像などでは証拠として残しにくい営業秘密なども、証拠として残すことができます(日本公証人連合会:事実実験公証証書)。

 

ただし、事実実験公証証書は、費用が1時間までにつき11,000円(休日・夜間は5割増)であり、別に日当・交通費が発生しますので、確定日付に比べると割高です。

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