秘密保持契約書の達人

このエントリーをはてなブックマークに追加

秘密保持契約における第三者:目次

  1. 契約実務における第三者とは
  2. 第三者の認識が一致しているとは限らない
  3. 「第三者」を定義づける

契約実務における第三者とは

「契約当事者以外の者」はすべて第三者

一般的な秘密保持契約や他の契約では、秘密保持義務として、次のように規定されます。

第○条(秘密保持義務)

甲および乙は、相手方から開示された秘密情報を第三者に対し開始し、または漏洩してはならない。

この「第三者」とは誰なのかという点が、問題となることがあります。

 

一般的な契約実務では、第三者とは、契約当事者以外の者をいいます。これは、秘密保持契約においても同様に考えて差し支えないものと思われます。

 

このため、まったく関係のない者は当然ながら第三者となります。また、業務委託先や子会社・親会社など、一定の関係がある者も第三者となります。

 

さらに、秘密保持義務の契約当事者で解説したように、従業員や役員なども、理屈のうえでは第三者であると考えられます。

 

ただし、非情に特殊な例外として、契約の種類や状況によっては、本来は第三者である者が当事者と同一視される理論もあります。

 

例えば、共有特許権に関する、いわゆる「下請け実施」の場合における親事業者と下請事業者の関係や、法人格否認の法理が適用される法人と役員などが該当します。

スポンサード リンク

第三者の認識が一致しているとは限らない

もっとも、秘密保持契約における「第三者」という用語は、法的には明確に定義づけられているわけではありません。

 

また、法的な定義よりも重要な問題として、秘密保持契約の当事者間で「第三者」についての認識にずれがある可能性も否定しきれません。

 

契約当事者に関係するすべての人が法律実務に精通しているわけではありません。このため、必ずしも、上記のような「契約当事者以外の者=第三者」という認識で一致するとは限りません。

 

「契約当事者以外の関係者も契約当事者に含まれる」は明らかな誤解

この点については、理屈のうえでは第三者として考えられるものの、感覚的には契約当事者の一部として取扱われかねない第三者が問題となります。例えば、業務委託先、下請け先、親会社、子会社などが典型的な例です。

 

このような第三者が登場する秘密保持契約の場合、開示者は「第三者=受領者以外のすべての者」と考え、受領者は「第三者=受領者と、その関係する業務委託先や子会社などの企業以外の者」と考えがちです。

 

後者の受領者の認識は、法的には誤解ですが、実際には、そのような認識は意外にありがちです。

「第三者」を定義づける

以上のように、契約当事者間で「第三者」の認識のずれがある場合、受領者は、第三者の定義を誤解して(または恣意的に解釈して)業務委託先や子会社に秘密情報を開示することがあります。

 

特に、日常的・恒常的に外注先に業務委託をしている会社では、情報管理や秘密保持義務に対する認識が甘く、特に意識せずに秘密情報を開示してしまうことがあります。

 

特業務委託先や下請け先は、従業員や役員とはことなり、ガバナンスが効きにくいといえます。つまり、それだけ秘密情報の管理が行き届かないリスクもあります。

 

このような開示者の意に反した秘密情報の開示を防ぐためには、秘密保持契約書において、第三者を明確に定義づけるか、または、秘密情報を開示してもよい第三者を明記するべきです。

 

参考:秘密情報の開示を受ける第三者

スポンサード リンク

このエントリーをはてなブックマークに追加
お問い合わせ