秘密保持契約書の達人

このエントリーをはてなブックマークに追加

コンサルティング契約書の秘密保持義務:目次

  1. コンサルティング契約とは
  2. コンサルの対価(=料金)は成果物の使用・譲渡の対価
  3. 依頼者から経営コンサルタントに対する秘密保持義務
  4. 経営コンサルタントから依頼者に対する秘密保持義務

コンサルティング契約とは

請負契約または委任契約

コンサルティング契約とは、経営コンサルタントが、依頼者に対して、その事業についてのコンサルティング業務をおこない、知識・技能等を提供する契約です。

 

単に知識・技能等を提供するだけの一般的なコンサルティング契約は、民法上は、準委任契約に該当します。ただし、なんらかの成果物を作成して提供するタイプのコンサルティング契約の場合は、請負契約(民法第632条)に該当することも考えられます。

 

準委任契約と請負契約とでは、経営コンサルタントの責任の性質(請負契約の場合は瑕疵担保責任、準委任契約の場合は善管注意義務)が変わってきます。

 

その他の違いとしては、以下のようなものがあります。

 

請負契約と(準)委任契約の違い
請負契約と準委任契約の違い

契約書には請負契約か準委任契約かを明記する

 

このため、コンサルティング契約書の中には、契約内容が請負契約なのか準委任契約なのかを明記しておくべきです。

スポンサード リンク

コンサルの対価(=料金)は成果物の使用・譲渡の対価

コンサルティング契約における対価は、経営コンサルタントがおこなうコンサルティング業務=作業に対する対価というわけではではありません。

 

もちろん、コンサルティング業務=作業に対して対価が発生するタイプのコンサルティング契約もまったくないわけではありません。ただ、そのような契約は、どちらかというと、コンサルティング契約というよりも、一種の業務委託契約のような性格が強いといえます。

 

コンサルティング料金=知的財産権の使用・譲渡の対価

一般的なコンサルティング契約の対価は、コンサルティング業務の結果として発生した情報や成果物、つまり著作物や(ノウハウを含む)営業秘密などの知的財産権を依頼者が使用できる対価であるといえます。

 

場合によっては、これらの知的財産権を譲渡する対価であることもあります。

 

コンサルティング契約=ライセンス契約

つまり、コンサルティング契約は、実質的にはライセンス契約の一種であるともいえます。

 

このため、コンサルティング契約の内容としては、一般的なライセンス契約と同様の内容を規定します。

 

具体的には、経営コンサルタントが提供した情報や成果物の使用許諾と目的外使用の禁止の条項または成果物の知的財産権権の移転の条項が必要です。

 

特に、これらの情報や成果物が著作物や営業秘密として著作権法や不正競争防止法で保護されていた場合、理屈のうえでは、いかに依頼者であっても、勝手に使うことはできません。

 

この点があいまいとなっていると、依頼者による情報や成果物の使用について、トラブルとなる可能性があります。なお、これらの規定は、契約が終了した後の取扱い(いわゆる残存条項)も重要となります。

依頼者から経営コンサルタントに対する秘密保持義務

経営コンサルタントには秘密保持義務がない

コンサルティング契約における秘密保持義務としては、依頼者・コンサルタント双方からの情報漏洩に注意します。

 

依頼者としては、より効果的なコンサルティングを受けるために、経営コンサルタントに対して、事業上の情報を提供する必要があります。しかも、経営コンサルティングに使う情報である以上、依頼者にとって、非常に重要でセンシティブな情報を提供することになります。

 

ところが、中小企業診断士の場合を除いてを除いて、経営コンサルタントには法律による秘密保持義務や守秘義務が課されている明文の規定がありません。

 

参考:外部専門家への情報開示

 

秘密保持義・秘密保持契約は必須

このため、依頼者として中小企業診断士以外の経営コンサルタントを相手としたコンサルティング契約を結ぶ場合は、必ずコンサルティング契約書では、経営コンサルタントに対する秘密保持義務を課すようにしてください。

 

なお、中小企業診断士は中小企業診断士の登録及び試験に関する規則第5条7号で間接的に秘密保持義務が規定されています。

 

ただし、この場合の秘密保持義務は非常に曖昧な内容ですので、中小企業診断士が相手方である場合であっても、契約書において秘密保持義務を課すべきです。

経営コンサルタントから依頼者に対する秘密保持義務

他方、経営コンサルタントとしては、依頼者に対して、知識・技能・成果物等の情報を提供・開示することになります。

 

これらの情報が依頼者だけしか使用できないものであればさほど問題とはなりません(むしろそのためのコンサルティング契約ですが。
しかし、依頼者の同業者などのような第三者も使用できるようなものの場合は、情報が漏洩したときのリスクがあります。

 

特に、依頼者の従業員が依頼者の同業者に転職した場合、情報が筒抜けになる可能性があります。

 

また、ライバル関係にあるとはいえ、経営者同士や担当者同士での交流がある場合、依頼者から一部のコンサルティングの内容が漏洩する可能性もあります。

 

経営コンサルタント自身の商材を守るためにも秘密保持義務・秘密保持契約は必須

経営コンサルタントとしては、コンサルティングの内容そのものが商材ですから、これが外部に漏洩すると、事業が立ち行かなくなる可能性があります。

 

このため、経営コンサルタントとして依頼者とコンサルティング契約を結ぶ場合は、依頼者に対して、契約書で秘密保持義務を課してください。

スポンサード リンク

このエントリーをはてなブックマークに追加
お問い合わせ