保有情報は自由に活用できる
受領者の情報は秘密情報とはしない
保有情報とは、秘密情報の受領者が保有している情報のことをいいます。
受領者が保有する情報はその受領者の財産ですから、原則として、自由に使用・利用・改変・公開など、活用することができます。
逆に、これを制限するかのような秘密保持契約、つまり受領者の保有情報までも秘密情報として秘密保持義務を課すのは、契約上の義務としては、不当に厳しいものといえます。
このような事情から、一般的な秘密保持契約では、開示の時点で受領者がすでに保有していた情報(=保有情報)は秘密情報の例外として取り扱われることが多いようです。
一般的に、この保有情報は、「自ら生産した情報」や、第三者から秘密保持義務を課されることなく開示されて保有するに至った情報(これは「公知情報」にも該当する可能性があります)が該当します。
他の権利者の知的財産権に注意
もっとも、いかにすでに保有している情報とはいえ、法律で制限されいる情報、特に知的財産権に関する情報については、その法律で活用が制限されることがあります。
このため、受領者としては、たとえ保有情報であっても、慎重な判断を求められることもあります。
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保有情報であっても例外がある
なお、保有情報の中には、開示の時点より前に開示者や第三者から秘密保持義務を課されたうえで開示された情報が含まれている場合があります。
このような情報については、たとえ受領者が保有している情報であったとしても、以前に開示した開示者や第三者を保護するために、秘密情報の対象外とするべきではありません。
表現を変えれば、日付けの新しい秘密保持契約において、あたかもそれまでの別の契約にもとづいて(特に開示者から)開示された秘密情報が秘密保持義務の対象なくなったかのような誤解を与える内容にしてはなりません。
このため、一般的な秘密保持契約書では、このように以前に開示者や第三者から秘密時保持義務を課されて開示された保有情報については、秘密情報の例外とはされずに、秘密情報として取り扱われることが多いようです。
参考:取得情報
受領者は「保有情報」であることが立証できるか?
実際に開示された情報が保有情報であった場合、受領者にとって問題となる点が、本当に「保有している」ことを立証できるかどうか、という点です。
「保有情報」であることの立証は難しい
企業が保有している情報は、さまざまな形で管理・保管されていますが、まず、「保有している」ということそのものを立証することが容易ではありません。また、単に「保有している」という証拠があるだけでは、法的な証拠としても問題があります。
というのも、一般的な書面の形式にしろ、デジタル形式=電磁的な形式にしろ、いわば「後づけ」で、偽造、改ざん、捏造などができてしまいます。
このため、開示者が情報を開示した場合に、受領者が「これは弊社の保有情報です」と主張したとしても、開示者からは、「開示した後から作ったものではないか?」=「後づけ」の保有情報と疑われることになりかねません。
ましてや、書面や電磁的な形式で正式に記録されていない場合、その情報を「保有している」と立証することは容易ではありません。
真正で時期を特定した確定日付入の証拠を残す
確定日付を利用する
受領者としては、これらの問題を解決するためには、日頃から重要な情報を証拠として残す作業=情報の形式知化(書面・データで残す)をしておく必要があります。こうすることで、「保有している」という証拠を残すことができます。
そのうえで、その証拠が、開示者からの情報開示の前に存在していたことを立証できるように対策を講じます。この際に活用できる制度が、いわゆる「確定日付」の押印です。
確定日付とは、公証役場でおこなわれている手続きで、日付が入った押印をしてもらう制度です。これにより、その確定日付が押印された書面は、その日付現在の時点で存在した証拠(ただし、その書面の内容については一切影響はありません)となります。
この確定日付の押印があることで、公証役場という公的な第三者により、開示者からの情報開示の時点以前に、その押印がされた書面が存在したという証拠となります。
この方法は、特許法上の先使用権を確保する意味でも、また、非公開の著作物の著作権を保護する意味でも、非常に重要です。
参考:公証制度の活用
また、確定日付のような公的なものではなく、私的なものではありますが、改ざんが事実上不可能なタイプのタイプタイムスタンプも活用するべきです。