口頭で情報開示があった場合の対応:目次
口頭での情報開示も秘密情報にできるが…
口頭での秘密情報の開示があった場合、秘密保持契約書の記載のしかたによっては、特に何もしなくても、その情報についても、秘密情報とすることができる場合があります。
例えば、開示する情報のすべてを秘密情報とする定義の場合は、理屈のうえでは(立証できるかどうかは別として)、口頭で開示された情報も秘密情報ということになります。
ただ、このような定義は、あまり実務的とはいえません。というのも、口頭での情報開示は、記録に残りません。
このため、秘密情報の漏洩があった場合には、口頭での開示があったのか、またはなかったのかについて、水掛け論となる可能性が高いからです。
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原則として口頭での開示の情報は秘密情報とはしない
このような事情があるため、秘密保持契約書によっては、そもそも有形の情報のみを秘密情報として扱い、無形(=口頭)の情報については、秘密情報とはならないような秘密情報の定義のしかたをしているものがあります。
記録媒体で秘密情報を特定する方法は、その代表的な例です。この方法の場合は、そもそも媒体に記録されていないものは秘密情報とはならないため、口頭で開示された情報は秘密情報にはなりません。
ただ、このような定義では、口頭で開示する情報が秘密情報に該当しないため、その情報の漏洩を気にするあまり、情報開示が促進されないことがあります。これは、結果として、契約当事者間のコミュニケーションをも阻害する可能性もあります。
このため、口頭で開示された情報を、後で秘密情報として指定できるようにすることもあります。
必ず秘密情報の指定の手続きを明記する
以上のように、記録媒体により秘密情報を特定する場合、一般的には、口頭の情報については秘密情報として取り扱いません。
例外として、一定の手続きを経たものについては秘密情報として取り扱います。このような規定とすることで、柔軟な対応ができます。
「口頭での秘密情報の定義」ではなく、その指定の手続きが重要
重要な点としては、口頭の情報を秘密情報とするための手続きを必ず明記しておくという点があげられます。
具体的には、口頭の情報の開示のがあるたびに、議事録等の書面でその情報を定義づけたうえで、契約当事者の署名押印または記名押印をおこなうように、秘密保持契約書で規定します。
この際、なるべく口頭の情報の開示があったその場で書面を作成して記名押印・署名押印を済ませるべきです。
よくありがちな方法としては、情報の開示者が、情報の開示があった後で書面を作成して、受領者にその書面で承諾を得るものがあります。このような方法は、受領者の承諾を得られず、トラブルとなることもありますので、なるべく避けてください。
秘密情報の指定ができない場合を想定する
ただ、実際問題として、口頭での情報開示があった際に、常にその場で議事録の作成ができるとは限りません。また、後日受領者の承諾を得る方法であっても、常に受領者からの承諾を得ることができるとも限りません。
このため、口頭での情報開示には、秘密情報に指定できないリスクが伴います。このようなリスクを軽減するために、次のような規定を設けることがあります。
第○条(秘密情報)
本契約において、開示者から開示された情報であって、その受領者が開示者の秘密であることを知っていた、または知り得ることができたものは、秘密情報に含まれる。
このように規定することで、口頭で開示された情報が秘密情報に指定できなかったとしても、場合によっては、その情報も秘密情報とみなされる可能性があります。
ただし、このような規定は「受領者が開示者の秘密であることを知っていた、または知ることができた」ことの立証が難しいため、開示者としては、過度に頼るべきではありません。