秘密保持契約書の達人

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『営業秘密管理指針』とは?:目次

  1. 営業秘密管理指針とは
  2. 秘密情報の保護のためには必読の資料
  3. 約4割の大企業が参考にする資料
  4. 秘密保持契約書の参考資料に注意
  5. 秘密保持契約書を取り交わすだけでは不十分

営業秘密管理指針とは

経済産業省が策定した営業秘密を管理する指針

営業秘密管理指針とは、その名のとおり、営業秘密の要件である秘密管理性を充たすための指針です。

 

平成15年1月30日に経済産業省によって策定されましたが、その後、平成17年10月12日、平成22年4月9日、平成23年12月1日の改定と平成27年1月28日の全面改定を経て、現在に至ります。

 

参考:最新版『営業秘密管理指針

 

内容としては、不正競争防止法の基本的な解説と秘密情報の管理のあり方が詳細に記載されています。また、これとは別の関連資料では、不正競争防止法の解説と秘密情報の管理のあり方が詳細に記載されています。

 

また、参考資料として、次の4点が付属していました(最新版には付属していません)。

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秘密情報の保護のためには必読の資料

営業秘密管理指針では、企業が保有する秘密情報が営業秘密として保護されるためには、どのように管理されるべきなのか、という点が具体的に解説されています。また、過去の判例の分析もおこなわれています。

 

営業秘密管理指針は、学術書とは違って、非常に実務的で、わかりやすく記載されているため、法律実務家以外でも比較的簡単に理解できる内容となっています。

 

最新版への全面改訂により、以前のものと比べて、かなり簡略化されました。ただ、関連資料が充実してきているため、経済産業省が提供する資料全体として内容がさらに充実してきています。

 

充実した参考資料を活用する

また、平成22年の改定によって付属された参考資料のうち、『営業秘密管理チェックシート』は、企業における情報管理の現状分析の参考になります(最新版には付属していませんので、リンク先をご参照ください)。

 

同様に、『営業秘密を適切に管理するための導入手順〜はじめて営業秘密を管理する事業者のために〜』は、営業秘密の管理をこれから始めようとする企業の足がかりとして参考になします(最新版には付属していませんので、リンク先をご参照ください)。

 

このように、営業秘密管理指針は、非常に有用性が高い資料であり、しかも、経済産業省のサイトで無料でダウンロードできます。このため、秘密情報の保護のためには、必読の資料といえます。

約4割の大企業が参考にする資料

経済産業省の調査によると、大企業(従業員300人以上または資本金3億円以上、全体の7割が製造業)の約4割が営業秘密の管理に『営業秘密管理指針』を参考にしている、と回答しています。

問2.営業秘密の漏えいを防止するとともに、不正競争防止法の営業秘密の3要件を満たすための情報管理にあたっては、何を参考に取り組んでいますか。
営業秘密管理にあたり参考にしている情報について

出典:経済産業省『営業秘密保護制度に関する調査研究報告書(別冊)「営業秘密管理に関するアンケート」調査結果』15ページ

秘密保持契約書の参考資料に注意

営業秘密管理指針は、非常に有用性が高い資料であるといえます。ただし、参考資料のうち、「各種契約書等の参考例」については、その取り扱いに注意する必要があります。

 

というのも、この参考資料で取り扱っている契約書等は、あくまで参考でしかありませんので、必ずしも個別の内容に対応しているとは限りません。これは、どのような契約書であれ、ひな型を使う場合には十分に気をつけるべき点です。

 

例えば、どの契約書の例を見ても、個人情報が秘密情報の例外に該当しないように対応した規定がありません。また、第三者の定義が不明確な点も問題です。

 

さらに、場合によっては独占禁止法違反となりかねないような規定もあります(19ページの「(製作・販売の禁止)」)。

 

行政機関のひな型であっても実態に合わせてカスタマイズして使う

これらの規定は、個々の契約の実態に合わせて修正して使用するべきです。また、足りない条項については、随時実態に合わせて追記していくべきです。

 

このように、経済産業省が作成した秘密保持契約書だからといって、あらゆる状況に使用できるような完璧な秘密保持契約書ではありません。このため、安易に「役所が作った秘密保持契約書だから安心」という考えは持つべきではありません。

秘密保持契約書を取り交わすだけでは不十分

以上のように、参考例にある個々の契約書の例の条項も問題ではありますが、それ以上に問題となるのが、秘密保持義務を守る側の意識の問題です。

 

営業秘密管理指針でも記載されているとおり、営業秘密の秘密管理性が充たされるためには、実に多くの対応が必要となります。単に契約書や誓約書にサインしてもらったからといって、そのことは、必ずしも秘密管理性の要件が充たされることにはなりません。

 

従業員に対する指導監督が重要

特に、従業員向けの就業規則、営業秘密管理規程、秘密保持誓約書などは、従業員がその内容を理解していないと、たとえ秘密保持誓約書にサインしてもらったとしても、秘密管理性が認められない可能性があります。

 

このため、特に従業員に対しては、研修などを通じて、情報管理体制についてよく理解してもらうようにしてください。

 

参照:営業秘密 〜営業秘密を守り活用する〜(METI/経済産業省)

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