秘密保持契約書の達人

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顧客情報漏洩のリスク:目次

  1. 顧客情報(顧客リスト)の漏洩とそのリスク
  2. 従業員による顧客情報(顧客リスト)の持ち出し
  3. 他社の従業員による顧客情報(顧客リスト)の持ち出し
  4. 企業が営業秘密として顧客情報を管理している

顧客情報(顧客リスト)の漏洩とそのリスク

顧客情報は、全てのビジネスモデルにおいて、最も重要な情報のひとつです。また、そうであるがゆえに、競合他社、業務委託先、場合によっては社内の従業員によって狙われることがあります。

 

特に、一般消費者を相手にしたビジネスモデルの場合は、個人情報でもある顧客情報は、常に狙われているといっても過言ではありません。

 

顧客情報は高額商品のセールスなどの悪用される

詐欺などの経済犯罪を目的とした場合を除いて、個人情報の漏洩は、一般的に、事業活動の一貫としての不正使用を目的として発生します。つまり、漏洩した顧客に対する高額商品のセールスなどが目的です。

 

例えば、証券会社の顧客情報が漏洩した場合、競合他社である証券会社からのセールスのみならず、不動産、他の金融商品など、異業種からのセールスがおこなわれたことがあります。この結果として、顧客離れを惹き起こすリスクがあります。

 

場合によっては犯罪に使われることも

クレジットカードの情報が漏洩した事件では、そのクレジットカードを悪用して商品が購入された事件もありました。このように、情報の種類によっては、経済犯罪に悪用されることもあります。

 

このような犯罪の発生も、顧客離れを惹き起こすリスクがあります。さらに、実際に経済犯罪が発生して顧客に損失が発生した場合は、損害賠償責任が発生する可能性すらありえます。

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従業員による顧客情報(顧客リスト)の持ち出し

転職・退職での顧客情報の持ち出しは違法・犯罪

また、特に営業職の従業員に顕著な傾向がありますが、従業員が退社し、競合他社に転職する場合や、自ら競合他社として独立する場合に、いわゆる顧客の引き抜きがおこなわれることがあります。

 

これは、場合によっては不正競争防止法違反となる可能性が高い違法行為です。しかも、退職した従業員だけでなく、場合によっては、その転職先の企業も不正競争防止法違反となる可能性もあります。

 

参考:営業秘密侵害罪の類型(出典:経済産業省『営業秘密の不正な持ち出しは犯罪です!それ大丈夫?(2013年3月)』)
営業秘密侵害罪類型その1
営業秘密侵害罪類型その2

 

「そんなこと知らない」という営業員には徹底指導を

しかし、一般的な営業職の従業員は、不正競争防止法違反になることや不正競争防止法そのものの存在を知らないことが多いようです。このため、このような顧客の引き抜きは、半ば公然とおこなわれています。

 

企業にとって、退職者にこのような行為をおこなわれた場合、自社の顧客を失うばかりではなく、競合他社の売上にも貢献することになります。これは、企業にとっては非常に大きなリスクであるといえます。

 

このような事態を防止するためもの、従業員との秘密保持契約書の取り交わしや、従業員からの秘密保持誓約書の徴収が非常に重要となります。

 

また、単に契約書や誓約書での対応だけでなく、普段から研修等で指導を徹底することが重要です。「知らない」では済まさない、という企業側の態度が、顧客の引き抜き、顧客情報の持ち出しを抑止します。

他社の従業員による顧客情報(顧客リスト)の持ち出し

安易な個人情報の外部委託は情報漏洩につながる

さらに、自社の労働者(従業員)ではなく、業務委託先や派遣会社の労働者(従業員)=派遣社員によって、顧客情報が持ち出されれるリスクもあります。

 

一般的に、顧客情報としての個人情報は、非常に件数や情報量が多くなり、結果として意外にコストがかかる傾向があります。このため、企業によっては、個人情報の管理を内製化せず、外部企業に委託することがあります。

 

これは、コスト削減の観点では妥当な方法かもしれませんが、情報の管理が行き届かなくなるリスクがあります。

 

実際に個人情報が漏洩した事件では、業務委託先の派遣社員が顧客情報をスマートフォンで持ち出して名簿業者に転売した例もあります。

 

業務委託先の管理監督・ハンドリングは「偽装請負」

情報漏洩を防止するためには、人材のハンドリングが重要なポイントのひとつですが、外部企業の従業員には直接的なハンドリングができません(これはいわゆる「偽装請負」に該当し、労働者派遣法違反となります)。

 

このため、外部企業に委託した顧客情報の漏洩を防ぐためには、いかに外部企業を(直接その労働者を指揮命令することなく)監督するかがポイントとなります。

 

参考:労働者派遣事業と請負により行われる事業との区分に関する基準

企業が営業秘密として顧客情報を管理している

なお、経済産業省の調査によると、大企業(従業員300人以上または資本金3億円以上、全体の7割が製造業)が次のような情報顧客情報を営業秘密として管理している、と回答しています。

問3.どのような情報を現在、営業秘密として管理していますか。
営業秘密として管理している情報の実態について

出典:経済産業省『営業秘密保護制度に関する調査研究報告書(別冊)「営業秘密管理に関するアンケート」調査結果』16ページ

 

これにより、顧客情報については、最も多くの、実に7割もの企業が営業秘密として取り扱っていることがわかります。つまり、顧客情報は、企業経営(少なくとも大企業の経営)において、最も重要な情報と考えられています。

 

参考:営業秘密とは

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