秘密保持契約書の達人

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知的財産権の専属管轄:目次

  1. 知的財産権が関係する裁判
  2. 特許権等の裁判の場合
  3. 意匠権、営業秘密、一部の著作権等の裁判の場合

知的財産権が関係する裁判

合意管轄のページでは、当事者が合意することにより、裁判所を指定することができることを解説しています。

 

ただ、すべての裁判について、裁判所を指定することができるわけではありません。特に注意を要するのが、知的財産権に関係する裁判です。

 

知的財産権に関する裁判の管轄は特別扱い

知的財産権に関する裁判の管轄は、その知的財産権の種類に応じて、民事訴訟法に定められています。

 

この管轄はいわゆる「専属管轄」であり、一部の内容を除いて(後述)、当事者が裁判管轄について合意していたとしても、管轄の変更は認められません。

 

このため、仮に秘密保持契約書で自身にとって有利な内容の専属的合意管轄を規定していたとしても、その合意管轄の規定が無効となる可能性もあります。

 

この点は、特に後述の特許権等の裁判に関して、特に東京・大阪以外の地方に本店所在地がある場合に注意を要します。

 

これらの点を踏まえ、秘密保持契約書における合意管轄が仮に自身にとって有利な内容であったとしても、過信しないように注意を要します。

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特許権等の裁判の場合

名古屋高裁以東=東京地裁・大阪地裁以西=大阪地裁

特許権等(特許権、実用新案権、回路配置利用権またはプログラムの著作物についての著作者の権利)に関する裁判の管轄は、次のとおりです(民事訴訟法第6条)。

  1. 東京高裁、名古屋高裁、仙台高裁または札幌高裁の管轄区域内=管轄が名古屋高裁以東に所在する地方裁判所が管轄の場合は東京地裁
  2. 大阪高裁、広島高裁、福岡高裁または高松高裁の管轄区域内=管轄が大阪高裁以西に所在する地方裁判所が管轄の場合は大阪地裁

すでに述べたとおり、この管轄はいわゆる「専属管轄」であり、当事者の別途の合意(=合意管轄>)があったとしても変更することはできません。

 

東京地裁か大阪地裁かは選べる

ただし、東京地裁と大阪地裁のうち、本来は管轄でないものについては、合意することにより管轄とすることができます(民事訴訟法第13条第2項)。

 

このため、特許権等について、あえて合意管轄を規定することにも一定の意味があります(例えば、名古屋市の企業が地理的に近い大阪地裁とする、など)。

意匠権、営業秘密、一部の著作権等の裁判の場合

本来の管轄での裁判も可能

意匠権等(意匠権、商標権、著作者の権利(プログラムの著作物についての著作者の権利を除く。)、出版権、著作隣接権もしくは育成者権または不正競争による営業上の利益の侵害)に関する裁判の管轄は、本来の管轄の地方裁判所か、または次のいずれかです(民事訴訟法第6条の2)。

  1. 東京高裁、名古屋高裁、仙台高裁または札幌高裁の管轄区域内=名古屋高裁の管轄以東に所在する地方裁判所が管轄の場合は東京地裁
  2. 大阪高裁、広島高裁、福岡高裁または高松高裁の管轄区域内=大阪高裁の管轄以西に所在する地方裁判所が管轄の場合は大阪地裁

なお、意匠権等の裁判については、特許権等の裁判とは違って、部分的な合意管轄を認める規定はありません。

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